永田潤子

永田潤子

(ながた じゅんこ)
大阪市立大学 大学院 創造都市研究科 准教授

1961年福岡県生まれ。女性に門戸を開放した海上保安大学校に、初のただひとりの女子学生として入学。以後、何をやるもパイオニアとしての道を歩くことになる。
26歳で女性初最年少で、巡視艇まつなみ(昭和天皇のお召船でもあった)船長。その後、行政官や船艇幹部職員としてのキャリアを積むも、自身を組織に活かすには知識が必要と思い立ち、埼玉大学大学院政策科学研究科(現:政策科学大学院大学)、大阪大学大学院経営学研究科博士後期課程にて、政策分析、意思決定、経営学を研鑽。
その後、母校の要請に応じて人材育成、教育研究の道へ。1997年海上保安大学校行政管理学講座助教授として行政の専門教育及び女子学生の教育にも注力する。

2003年より地域や社会の問題解決のため設立された大阪市立大学創造都市研究科准教授。専門は公共経営・ソーシャルマーケティング。特に、社会を変革するための理論と実践がテーマであり、最近では“消費を新しい何かを生み出す生費へ”をテーマに、買い物を通じた環境問題の解決(お買いもの革命プロジェクト)の研究代表やママ・カレッジプロジェクトなど暮らしを通じた社会変革を実施中。

また、リーダーシップや女性の活躍など自身の経験を活かした研修・講演も行っており、最近では企業の働き方改革に向け、個人と組織の本領発揮をテーマとした研修依頼も多数。
最近の著書としては、「お買い物で社会を変えよう」(2014年 公人の友社)「おかいもの革命」(2014年 公人の友社)、自身の経験と知識を活かした「女性の働き方」(2017年 文響社)がある。

趣味は、温泉と昼寝。
仕事は好きだが、何よりもパートナーと飲む昼ビー(休日のビール)と犬との時間が人生の楽しみ。

【関連リンク】
* 永田潤子 BLOG
* 大阪市立大学

『半径3メートルからの
小さく静かな波をおこすこと』

小さく静かな波をおこすために、必要だと思うこと。

1 考え方とやり方の両方が必要

大学院で社会人の学生さんに講義をしていると、学生さんから受ける質問には2つの種類があります。その2つとは「やり方に関する質問」と「考え方に関する質問」です。 確かに、何かをやるにはどうすればよいのか、その方法ややり方が解らないとできません。
しかし同時に、どう考えればよいのかがはっきりとして、初めてもっともよい方法ややるべきこと決められるわけです。
やり方は、考え方次第で変わってくることもあります。

例えば、ビジネスを学ぶには大きく2つの習得方法があります。
ひとつはケーススタディを積み重ねることによって体得する方法(例えば、ハーバード大学)です。もうひとつは、現場の体験にだけ任せるのではなく、理論やものの見方をしっかりと教える方法(例えば、シカゴ大学)です。どちらが良いかではなく、ケーススタディと理論はどちらも必要、職場の体験から学ぶ実践力と知識が与えてくれる理解力、この2つのバランスです。

これはどんな仕事でも、場面でも言えるのではないでしょうか。考え方とやり方、知識(理論)と実践、考えるだけでなく動くこと。両方が必要。

2 暮らし目線と社会目線でのアプローチ

私が名古屋で「お買いもの革命プロジェクト」に取り組むヒントになったのが、アリス・テッパー・マーリンさんの“Shopping For a Better World(より良い社会をつくるお買いもの)” という本です。

ハンドバックに入るサイズのその本は、例えば、ハインツというケチャップの会社のページを開くと、ハインツという会社が環境に配慮した行動をしているか、武器輸出に関するかかわりがないか、女性やマイノリティの方を登用しているかなど、企業の姿勢を評価した、企業の通信簿の様な本ですね。そうすると、驚くことになんと5人のうち4人までが買い物の仕方を変えたという結果が出たのです。
お買いものという暮らし目線の活動が、企業、ひいては社会に影響を与えたわけです。

例えば、環境問題の解決を考える場合、「社会目線」とはカーボンオフセットやグリーン調達などであり、「暮らし目線」とは、マイボトルや電気をこまめに消すといったことですね。 大きなCO2の削減には繋がらないかもしれないけれど、マイボトルといった日々の「暮らし目線」で変えていくことと、カーボンオフセットのように、社会が一体になった「社会目線」で大きいCO2の削減量に繋がることをする、この2つのアプローチの両方が必要だと考えています。

3 個人と組織・社会の関わり・バランスをつくりなおす

海上保安庁時代、がんばり過ぎて自分が見えなくなったことがありました。求められる役割に応えたい、評価されたい。でも、現実は苦しい。毎日疲れてヘトヘトで、仕事のことで頭がいっぱいでした。 このときの自分の状態を図に描いたとすれば、私はピラミッド型の組織の中にポツンと記された、ただの点。

「辞めようか」と悩んだとき、「自分には辞める自由がある(選択権は自分にある)」ことに気がつきました。そして、そのとたん、組織にへばりついていた自分が、ピラミッドの外へポンと飛び出した気がしたのです。

最近、ワーク・ライフバランスや企業の働き方改革がテーマになっています。 これらの言葉は、単に仕事と家庭の両立といった狭い意味ではなく、「選択権のある自分がどう生きるか、どう働くか」ということを考えるチャンスです。

自分と社会の関係も同じです。
その大きさに自分が何かをしても変わらない・・と非力な自分を感じてしまうのかもしれませんが、自分を起点として自分を変えることが社会を変えることに繋がっていくと思います。

略歴

1961年
福岡県生まれ
1978年
女性に門戸を開放した海上保安大学校(広島県呉市)に、初のただ一人の女子学生として入学(海上保安大学校本科30期)
1982年
同大学校専攻科を修了後、巡視船勤務や霞ヶ関勤務
1987年
26歳で女性初・最年少で巡視艇「まつなみ」船長となる
(巡視艇「まつなみ」は昭和天皇のお召し船でもありました)
1990年
現場で感じた問題意識を解決したいと思い、埼玉大学大学院政策科学研究科(現:政策研究大学院大学)にて、政策の分析や意思決定を研究(政策分析修士)
1995年
その後も、行政官や巡視船幹部としてのキャリアを積むも、自身を組織にとって有効に活かすためには、大学校での後輩の教育に当たることと感じ、大学校の要請に応じ教育研究の道へ。
大阪大学経済学研究科へ入学
経営学一般、行政の意思決定について研鑚(1999年大阪大学経済学研究科後期博士課程単位取得満期退学)
1997年
海上保安大学校行政管理学講座助教授
2003年
大阪市立大学大学院創造都市研究科准教授
2008年9月から大阪府橋下知事のブレイン(特別顧問)として改革に携わっている。
また、企業のCSRにアドバイザーとしても企業の社会変革に関わる。